REIT(不動産投資信託)におけるNAV倍率(Net Asset Value倍率)は、REITの株価がその純資産価値(NAV)に対してどれくらいの倍率で取引されているかを示す指標です。
と一口に言っても理解が進みづらいので、具体例を出して考えていきます。
資産が1,000 負債が800 発行済投資口数が100 株価が1
といったREITがあると仮定します。この場合
NAV=資産1,000-負債800=200
時価総額=発行済投資口数100*株価1=100
NAV200に対して時価総額が100であるため
時価総額100/NAV200=NAV倍率0.5となります。
REITの持つ純資産が200であるのに対し、市場価値は100としか評価しておらず、割安であることを示します。株式におけるPBRの考えに近いですね。
NAV倍率が1.0以上
・市場はそのREITに対して高い評価をしている。
・収益性が期待されている場合や、将来的な成長が見込まれる場合に起こりやすい。
NAV倍率が1.0未満
・市場はそのREITに対してあまり良い評価をしていない。
・資産運用の効率性や収益性に懸念がある場合、または市場全体が不安定な場合などに見られる。
REITの株価はNAV倍率以外にも、市場の金利動向や経済情勢などの影響も強くうけるため、この指標のみでREITの良し悪しを判断することは難しいです。
ただし他REITの平均から大きく乖離して倍率が高い(低い)場合などには、何らかの要因があるのでは?と一度立ち止まって考えてみるのもよいかもしれません。
2024年現在はNAV倍率の平均はおおむね0.8~0.9倍程度を推移しています。
また過去10年程度の平均値は約1.1倍程度です。
直近の数値が過去10年間の中でも最低に近い数字となっております。
その理由としては日本の政策金利の上昇が一つの要因です。
ほとんどのREITが、不動産購入や運営のために借入を行っています。
金利の上昇により利息負担が増えることで運用コストが増加し、収益状況が悪化することが懸念されています。
また収益状況が悪化した場合は、投資家に対する分配金の減少のおそれがあり、これも直近のNAV倍率をさげている一因です。
金利上昇は債券投資の利回りを押し上げるので、REITの分配利回りに対する相対的な魅力が減少します。
他にはリモートワークの定着によるオフィスREITの収益性の悪化等、様々な要因が考えられます。
とはいえ、歴史的に見れば現在のJ-REITは比較的割安な水準に位置しており、魅力的な利回りの商品も増えてきています。
PFの一角に据えてみるのも面白いかもしれません。
(2024/11/28)